らぼのEnglishラボ

会話やライティングに役に立つ英語表現を様々な角度から紹介しています。

303. 記憶にございません。

Scenario : 国会では、不透明なお金の流れについて参考人招致が行われるが、大抵こう言っている。


「記憶にございません。」



"I don't recall."


【ポイント】"remember"と"recall"の使い分け。


「覚えている」という意味で最も一般的に使われる"remember"ですが、刑事物や法廷物のドラマでは、よく"I don't recall."と言っています。「覚えていない」という日本語があてはまるのですが、"I don't remember."ではないのです。
どこが違うのでしょう?


ロングマンのシソーラスで確認します。
"remember" 
to form an idea in your mind of people, events, places etc from the past
過去に関係した人、出来事、場所などのことで頭に残っているものを形にすること


I remember Janine – she lived in that house on the corner.
ジェニンのこと覚えてます。その角の家に住んでたわ。

I can’t remember how the film ends. 

その映画の終わりがどんなだった思い出せないわ。

He remembered meeting her at a party once.

彼はかつてパーティーで彼女に会ったことを覚えていた。


"recall" 
to remember a particular fact, event, or situation, especially in order to tell someone about it
ある事実、出来事、状況を覚えていること。特にそのことについて人に話す目的があるときに使う

Can you recall where your husband was that night?

彼の夜ご主人はどこにいらしたか覚えていらっしゃいますか(思い出せますか)?

She recalled that he had seemed a strange, lonely man.

彼女は彼は奇妙で孤独な人のようだったと思い出した。


共通した部分もあると思いますが、
「これからすることを忘れないでおく」「そのことを心に留めておく」という意味では、"recall"は使えません。単語の"re-call"を見るとわかるように、「再び呼び出す」という意味が込められているからです。


「人に話すのが目的」のときには、努力して意識的に思い出さなくてはなりません。そういうときには、"recall"です。このことから、刑事物や法廷物によく出てくる理由がわかります。
日本語表現で、「思い出す」と「覚えている」を同じ意味で使うことがあるので、"recall"と"remember"が同じ日本語になることがあるのです。


Englishラボのらぼでした。