らぼのEnglishラボ

会話やライティングに役に立つ英語表現を様々な角度から紹介しています。

1449. ライティング編:ワンランク上の表現にする英語[26]---見たことを描写する。

今日のワンランク上のライティングでは、「雪の日」を題材として、「英語で描写する」ということに焦点を当てて見ようと思います。
目の前に起っていること、見た風景などが読者の頭の中で映像となって浮かぶようなテクニックです。


題材は、ニューヨークタイムズのMetropolitan Diaryからです。(原文はこちら。)


英文の注目部分に下線部をつけ、その解説を囲みの部分に書きました。



New York’s Sounds of Silence
ニューヨークのサウンド・オブ・サイレンス("Sounds of Silence"---『沈黙の音』)


By MARK KRAUSE


We woke up on Blizzard Saturday to the strangest sound: silence. Yes, gusts of wind and snow softly brushing up against the windows


ブリザードの土曜日、私たちは静寂という不思議な音で目を覚ました。そう、それは窓をさっとかすめていく突風と雪だった


Tips for good writing


● on Blizzard Saturday  ブリザードの土曜日曜日

ここでは印象に残った特定の日の感じを表すために固有名詞的に大文字で表現しています。


● woke up to ~  ~(名詞)  ~で目を覚ました 


● ~ brush up against the windows     ~(風や雪)が窓にブラシをかけるように吹く様を表現した書き方


● 後半は、"silence"の具体的な説明として全体を名詞となるように表現している。日本語でいう「体言止め」。



But no dump trucks thundering off building canyons. No delivery vans bleepingly backing up. Not one siren. Here and there the muffled rumple of snowplows trying their best.


しかし、ビルの谷間を走り抜けるダンプカーはない。ピッピと音を立ててバックしてくる配送車もない。サイレンもない。あちこちで除雪車が頑張っている弱くガシャガシャいう音が小さく響いている。


Tips for good writing


● thundering off building canyons

"thunder"を副詞の"off"と共に動詞で使っています。「ダダダッ」とビルの谷間を走り抜けていく感じを出しています


● "bleepingly" → "bleep"(動詞)→ 高くて短い電子的な音をたてる → 車がバックする時の「ピッ、ピッ・・・」に当たります。


● "muffled" → 音を何かでくるんで小さくしたようなこもった「ウィーン」とか「ブワ~ン」とか、いったような低く弱い音の表現に使われる形容詞になっています。


● "rumple" → 「クシャクシャ」、「カシャガシャ」、「グチャグチャ」など、ここでは除雪車が作業している音を表しています。


 日本語の擬態語に当たる表現を使いながら、すべて名詞の形で並べています。頭を否定語の"No"や"Not"で統一して「その音が無い」ことを強調しています。




Like a spy, the quiet followed us all day. We made it to the Whitney — Gansevoort Street a mute, abandoned set to a long-forgotten film.


スパイのように、静寂は一日中私たちをつけ回した。私たちはガンズヴォート通りのホイットニー(美術館)にたどり着いた。そこは、長く忘れ去られた映画の、音のない放置された舞台のようだった



Tips for good writing


● "the quiet" → 普通は形容詞で使うことの多い"quiet"ですが、ここでは名詞です。(不可算)または、形容詞に定冠詞を付けて、形容詞の特性を持った「ものや人」を表していると考えることもできます。



(The Whitney Museum of American Art ホイットニーアメリカ芸術美術館)


(Gansevoort Street))



Inside the museum we were practically alone. On an upper floor we looked out through 30-foot windows as a raging gray and white painting silently formed, collapsed and formed anew


美術館の中には、私たちだけしかいなかった。上階では、30フィートの窓から、荒れ狂う灰色と白の絵画が静かに形成され、崩れ、また新たに形成される様子を眺めた。


Tips for good writing


● 2文続けて、副詞を文頭に持ってきて強調し、リズムを整えています。


● "as ~"は、「~として」。窓が絵の枠となり、外の情景がまるで絵画のように描かれています。


● "formed, collapsed and formed"はすべて"being"が省略された分詞構文。たえず不安定な空模様を絵画に見立てて表現しています。




Behind us in the cool-white vault of museum space, Frank Stella’s enormous, colorful sculptures screamed “look at us” without saying a word.


私たちの背後の冷たく白い丸天井の展示スペースでは、フランク・ステラの巨大でカラフルな彫刻が、何も言わずに「私たちを見て!」と叫んでいた


Tips for good writing


● "screamed""without saying a word"という全く反対の表現がこの文の中ではとても効果的に使われています。



(Frank Stella’s enormous, colorful sculptures がこれ。)



The quiet continued into the night and next day. Our apartment began to feel like a log cabin, tucked in the folds of a mountain pass, with nothing to be heard near or far. 


その静寂は夜も翌日も続いた。私たちのアパートは、近くにも遠くにも何も聞こえない、峠のひだにたたずむ丸太小屋のように感じられるようになった。


Tips for good writing


● "Our apartment began to feel like ~"とあえて、ものを主語にして、主観的な表現を避け、静けさを客観的な物として強調しています。



Even the day after that, on a sunny walk to the top of a snow-covered Central Park Reservoir, we were surrounded by stillness as we looked south to the silhouette of the city — a shadow of its noisy self.


その翌日、雪で被われたセントラルパークの貯水池の先まで晴天の中を歩いた時も、周りは静まりかえっていた。南を向くとニューヨークの街のシルエットが見えた。騒々しい街は影となって静まりかえっていた。



Tips for good writing


● "stillness" → "quiet"に"calm"が加わった感じ。


● ここの"as"は"when"だが、"as"を使うことで、「~しながら」といった動きが感じられる。


● "the city"は、ニューヨークの街のこと。




Now, I love the sounds of New York. The thriving hum of humanity striving. Buildings that bark and flirt for attention. The constant whispering of history everywhere.


今、私はニューヨークの音が大好きだ。人間が努力している絶え間なく聞こえるハミングだ。目を向けてもらおうとして吠えたり、甘くささやいたりするビルたち。いたるところで歴史のささやきが絶え間なく聞こえるのだ。



But oh, when the city falls silent, New York sings.


しかし、ああ、ニューヨークは静寂に陥ると、歌を歌うのだ。



......the silhouette of the city — a shadow of its noisy self.の部分ですが、"shilhouette"と"shadow"の使い分けに何か意味があるように思います。この部分の日本語の表し方をどうしたらいいでしょう?



明日は、「ちゃんと考えてあったんだね。」です。
読んでね。

Englishラボのらぼでした。